■ 建築の 静 と 動 <その1>
建築・住宅のデザインあるいは状態には、はたして静と動のどちらの状態が求められるのでしょうか。
私はしばしば考えることが有ります。もちろん2極論ではないのは明らかですが、2極化してみることで見えてくるものも有ります。
・人間は、住む場所の内部空間に、静かな場所を求めるのか、勢いのある空間を求めるのか。
・建物の外観に、静けさを求めるのか、ダイナミズムを求めるのか。
・周囲の環境に対して同化を求めるのか、突出を求めるのか。
・自然風景あるいは都市風景の中でどう有るのが適切なのか。
・あるいは適切かどうかを超えて求めてしまう状態はどちらなのか。
私の中でとても印象に残っている経験が有ります。
それは、スイス南部の現代建築を見て回ったときのことです。私はスイス民家と風景の関係の中に面白い関係を発見して一人喜んでいました。
風景全体の印象は、とにかくむき出しの山々がエネルギッシュで、その谷間に集まる民家や街はとても「冷静」で、シンボリックな建物があまり見当たらないのです。スイスの山裾に住む人々の心のシンボル・アイデンティティは恐らく、背後にいつも佇む山々に有るのだと考えます。その風景の中では、建築がシンボリックだったり、ダイナミックである必要が無いのだと思います。きっと人間の作るシンボルなど、それらのエネルギッシュな山々を前にして、ちっぽけで、陳腐なものに感じられるに違いありません。
それに対して、フランスやスペインなど突出した山などが無い緩やかな土地には、シンボリックでダイナミックな建物が見られます。
人間は、静と動のバランスの中で何か不足している物を求め、創り上げるのだと思います。
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Kazuro Otsubo Architects 大坪和朗建築設計事務所
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