■ 自然に潜む美を、どう扱うか
昨日は、土木構造設計家の講演を聞きに出かけた。
「自然の中にあるデザインをどう取り扱うか」
長い間考えてきたことが、私なりにまとまり、
とてもスッキリした気持ちなのであります。
(長い間考えていたこと → http://
要約すると「自然の持つ美を、どのレベルで参照すべきだろうか」
ということです。
それについての、現時点での私なりの結論はこうです。
特に建築に関しては、
自然から抽出すべき要素は
複雑性ではなく、
複雑なものの集合が、どのように「シンプルな合理性」を創り上げたのか
ということを参照すべきなのではないかな~と考えています。
●自然の形-01(生物の細胞や骨格)
は、細胞のレベルでの状態は必ずしも美しいわけでなはく、
それらがまとまった「全体の骨格」が合理的で美しいのである。
参照すべきは、ミクロの状態(細胞)ではなく、マクロな状態(骨格)であるということ。
つまり、
細胞レベルでの合理性は、
細胞の「自然増殖」のための合理性であり、
あくまで全体を構成するための「部分」の合理性であり、
細胞の集合体は複雑混沌としていて、美しいとは限らない。
細胞の自己増殖は、
細胞の表面積ができるだけ増えるような仕組みになっているので、
法則性を持ちながらも、より複雑になっていくわけです。
従って、ミクロの集合体として
(ミクロな法則性はあるものの、全体としては複雑な構造体として)
参照するのは、果たしてどうなのだろうか。
それに対して
●自然の形-02(外的要因から生み出される風紋)
は、ほぼ力学的な理由から形づくられた形状の集合であるが、
この場合は、先ほどの例とは逆に、全体よりも部分の合理性を参照すべきなのではないかと思う。
部分を拡大しても合理性があり、
部分を集合させても合理性がある。
更にそれらの集合が別の大きな形を形成し、
それらの集合体が、また更に別の大きな風景を形成している。
というような場合。
例えば、風紋は、
一つ一つの小さな「砂の山脈」として見ても流体力学的に意味のある形で、
それらが集まった「風紋」も、恐らく流体力学的に合理性をもっている。
それらがさらに集まって隆起した「砂丘」の連なりも、同様に流体力学的に合理性をもっている。
小さな砂の山脈と同じような形をし、
それらが集まったものは、過酷ではあるが美しい「砂漠」として広がっている。
この場合は、
先ほどとは逆で、部分の方が単純な形状で、
全体は、一定の法則はあるものの複雑化していくわけです。
まとめますと、
建築の場合、ドローイングなどと違い、
ある程度の合理性が必要なわけです。
ですから、
自然から抽出すべき要素は
複雑性ではなく、
複雑なものの集合が、どのように「シンプルな合理性」を創り上げたのか
を参照すべきなのではないだろうか~と考えるのです。
「複雑な構成要素」が現れているレベルではなく、
全体としての「シンプルな合理性」が現れているレベルで
エッセンスを抽出すると、より自然な状況に近づくと思うわけなのであります。
※写真参考文献
THE ANATOMY OF NATURE / Andreas Feininger
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