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2011.11.09

■ 用途変更・コンバージョンのためのチェックポイント : 持続可能な施設運営のために

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更新する家というコンペの書籍出版に関わったことを切っ掛けとして、
複雑な法規関係をまとめる良い機会と考え、
用途変更・コンバージョンのためのチェックポイント をまとめました。

「東京建築士会編 更新する家 リノベーション住宅大研究」
へ寄稿した原稿です。

 

■用途変更・コンバージョンのためのチェックポイント

持続可能な施設運営のために
社会に必要とされる建物用途は、時代によって変化します。その変化に対応するために、建物の用途を変更したい、更には、複合的用途を持たせたいという建物所有者も多いのではないかと思います。
まだまだ現役で使用できる建物を壊さず、部分的な変更で使い続けられれば、建物が無駄にならず、運営資金的にも余裕が出来ます。

そこで本稿では特に、不特定多数の人々が利用する住居系建物を、100m2を超えて用途変更を考える際に考慮すべき事項をまとめました。
社会ニーズの変化に迫られて用途変更をしようとする場合、その規模を超えることが少なくないと考えられるからです。

昭和56以前の建物か、それ以後の建物か
昭和56年以前の、構造強度が現在の基準に達していない建物を、類似の用途以外の「特殊建築物」(不特定多数の人々が利用する建物。共同住宅・福祉施設・店舗など。)へ変更したい場合は注意が必要です。現行法規をクリアするために詳細な構造調査や、補強工事をしっかりと行う必要があり、工事費への影響が大きくなるからです。それ以後の建物の場合は、大がかりな構造調査及び補強は必要ありません。

昭和56年以前の建物を用途変更するには
A. 申請が不要な用途への変更にとどめる。この場合、複雑な手続きが不要なため、工事費を抑えることができます。
B. 申請が必要な用途へ変更する。その際には、新築で建てる場合の6〜7割程度の工事費を掛けても良い心づもりで、建物構造を詳細に調査・補強をした上、現行法に適合させ、新たに申請します。

A. 申請が不要な用途変更とは
申請を避けるには「類似の用途」への変更にとどめるか、事務所などの特殊建築物以外の用途に変更する。

しかしながら、類似用途への変更程度では、街の変化や、少子化などの理由から、今後永きに渡って、その施設を継続できない可能性も有り得ますので、注意が必要です。
また、駅から遠いなど、必ずしも便の良くない住居地域で、事務所スペースの需要がどれほど有るのかということについても、考慮する必要が有ります。

B-1.申請が必要な用途変更とは
類似の用途でない「特殊建築物」(不特定多数の人々が利用する建物。共同住宅・福祉施設・店舗など。)に変更する場合は、その用途に当たる部分の床面積の合計が100m2を超える場合に申請が必要となります。

老人福祉施設・デイサービス等へ用途変更したい場合は、廊下や階段の幅やEVの設置など「バリアフリー新法(旧.ハートビル法)」というバリアフリー化の基準として作られた法律を満たしている必要があり、注意が必要です。

B-2.完了検査済証は残っているか
「完了検査済証」が残っているかどうかは、非常に重要なポイントです。
昔は、完了検査をしないで済ませてしまうことも多かったようなので、検査済証自体が無いケースもあるのですが、ここが結構なネックになります。
完了検査を受けていない建物は、図面通りに正しく作られたことを証明する書類が無いため、まず、それを証明するために詳細な構造調査が必ず必要となります。

また、完了検査済証が残っていない場合は、
様々な所が図面通りになっていない可能性を考慮する必要があります。
容積超過・斜線制限超過なども有り得ますので注意が必要です。
また、防災設備などについてもチェックする必要が有ります。

B-3.減築という方法
減築とは、建物のボリューム(床面積)を減らすことをいいます。
改装したい建物が既に規定の床面積を満たしている時に有効です。
例えば、以下のケースです。

・EVを別棟として新設したい。(床面積増加)
・増床したい。(床面積増加)
・その他、新しいボリューム・機能を追加するために、既存の床面積を一部減らす必要がある場合。

比較的手軽と思われる減築方法を一つご紹介します。
建物の本体構造への変更を最小限に抑えつつ減築する方法として、上方階の外壁を後退させてバルコニーを作る方法があります。
開口の多い、耐力負担の少ない外壁を屋内側に後退させれば、有効な構造を極力減らさずに、床面積を減らすことができます。

また、斜線制限超過については、天空率計算単独でもクリア可能な場合もあり、それ以上の場合でも、減築と併用することによってクリアすることが可能です。

B-4.関連法規等もチェック
建築基準法以外にも、業態に関連する法律をチェックする必要があります。
マンスリーマンション・ウィークリーマンションを検討する際は「旅館業法」もチェックが必要です。旅館業とは、ホテル・旅館・簡易宿所・下宿営業をいい、これに該当する可能性が有るからです。
トランクルーム等を検討する場合は「倉庫業法」もチェックが必要になります。(床の積載荷重の検討も必要です。)
また、飲食に関わる施設を含む場合は、保健所とも協議が必要になります。

以上、チェックリストとしてご活用頂きつつ、
方向性の決定に役立てて頂ければ幸いです。

 

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